コンテスト優勝とプロデビューについて

皆様こんばんは!Producing office SOLEIL杉山薫です。
本Columnの更新は1ヶ月に1度を目標にしているのですが
元旦に記事を書いてから間隔が空いてしまい
気づけば花粉症持ちの私にはとても辛いシーズンになってしまいました。

花粉については話しだすとキリが無いので
それは本当にプライベートの場に留めたいと思いますが(笑)
一応、次のColumnの題材は何にしようかなと言うことは
常日頃アンテナは張っているものの
なかなかタイミングや、Columnのボリュームに合った
ことを書けるかなど、考えているうちにその話題の
旬が過ぎてしまったりして、今までColumnに書いてきたことは
私の中ではそれなりに選定したことを書いております。

そんな中、今日は「コンテスト」について
タイムリーな情報があったので、急遽書くことにしました。

コンテストはプロを目指す上で必須なのか?

時々生徒さんから、コンテストでの経歴が無いが
それでもプロを目指せるのか、プロを目指す上で
コンテストの優勝経験は無ければいけないのか
と言った質問をいただくのですが
コンテストとキャリアの位置づけは
クラシックとポピュラーで大きく異なります。

私が考える、コンテストの必要性について以下の表にまとめました。

以前のColumnでも少し触れましたが

クラシック(芸術音楽)で生きるためには
コンテストの肩書は最低1つは必須
ポピュラーで生きるためには必要皆無

これが私の基本的な見解です。

それでは、なぜクラシックではコンテストが必要で
ポピュラーではコンテストは必要無いのか
掘り下げていきましょう。

芸術音楽は音楽の質を競い、大衆音楽はセールスを競うと言う違い

敢えてクラシック、ポピュラーと言う表記ではなく
芸術音楽と大衆音楽と言う表記にしましたが

私は、フィギュアスケートの試合の様子を見る度、
ピアニストの演奏会に通ずる物を感じ、
そうしたことを大学時代の先生方にお話すると
やはり皆様同感してくださいます。

・広い舞台で1人きり
・1度始めたら終わりまで後戻りが出来ない
・ジャンプ前の助走の、独特の緊張感

こうしたことは、クラシックのピアノ演奏会でも同じで、
演奏者は作曲家が作った曲の譜面を暗譜し
何度も繰り返し練習した曲を
聴衆の前でたった1人で演奏します。

舞台に立ったら、頼れるのは自分のみですし、
何より私が共通だと感じる部分は
フィギュアスケートの1番の見せ場である
ジャンプに入る前の助走の瞬間です。

ピアノの曲を練習していて、勿論曲の全てが
大事ではあるのですが、やはり「決め所」と言うのが
どの曲にもありまして、演奏者は曲を暗譜しているので
何分何秒どの辺りにその「決め所」があるかを
把握しています。そのため、決め所が近づいてくると
どうしても、もうすぐ、あの難しいところだ、とか
構えてしまうのです。
そうした雑念を一切振り払って演奏にのみ集中出来る人こそが
プロの演奏家なのですが、芸術音楽の世界は
是非はともかく、音楽と言う数学や競泳のタイムのように
誰もが分かる白黒ハッキリした評価をつけられない物に対して
点数をつけ、優劣を競っている世界です。
そのため、クラシック音楽、芸術音楽でレーベルと契約して
CD作品をリリースするには、その演奏家が周囲より
優れていることを証明出来るものが必要であり、
そうした自身の能力を証明出来る物を持っていない人は
そもそもレーベル担当者の視界に入らない可能性が高いです。

そして実は、クラシック音楽のコンクール実績に近いものが
ポピュラー音楽における「動員数」です。
プロデビューまでの過程は人それぞれですが、当然
レーベル担当者やプロデューサーは将来自社へ利益を生み出せる
可能性が少しでも高いアーティストと契約を結びたいと考えます。
声質、ルックス、作詞作曲能力、様々な要素を吟味して
契約を結ぶか検討を重ねる訳ですが、その中での重要な
判断基準として「動員数」が挙げられます。
動員数とは、ライブにお客さんをどれだけ呼べたかと言うことですが
特にプロデビューしていない状態、プロのマネジメントが
ついていない状態で人を呼べた数、CDの売上実績は
将来そのアーティストが伸びるかどうかを判断する重要なポイントです。

見出しに芸術音楽は音楽の質を競い、
大衆音楽はセールスを競うと書きましたが、
これはポピュラー音楽は売れれば音楽の質などどうでもよいと
言うことではなく、将来自社に利益をもたらしてくれるアーティストを
探すことこそ、ポピュラー業界の審査員(レーベル、プロダクション
担当者)が命を削っているところですので、コンテストと言う
公募で集まる中から悠長に選ぶようなことはせず
常日頃、自らの足で有望な新人を探しているため
コンテストの優勝経験有無自体は、プロデビューや
プロデビュー後の待遇には殆ど影響しないと言うことです。
デビューのキッカケを何かひとつでも確率を上げるために
応募することは否定しませんが、私は、コンテストよりも
実績を作ることを、ポピュラーのプロデビューにはお勧めします。

コンテストに出る時のマナーについて

私が、急遽この記事を書こうと思ったトリガーとなった出来事です。
クラシック、ポピュラー共に言えることではありますが
コンテストに出るのなら、最低限のマナーは守ってほしい
そして私が考えるマナーとは、

アマチュアの人のためのコンテストにプロ志望者が出て優勝しても
それはキャリアにつながらない

と言うことです。
先程、のど自慢のチャンピオン大会を家族が見ていたので、
私も少し見たのですが、明らかに「場違い」と思われる人たちが
何名もいたことに、驚いてしまいました。
それは、

親がプロの歌手にしたいと思い、英才教育を施してきた子供

です。
自分の子供の才能を、1人でも多くの人に知ってほしい
どんな手段を使ってでも、レーベル関係者、業界の偉い人の
目に留めてもらいたいと言う気持ちは理解出来ない訳ではありません。
ですが、アマチュアの人達の晴れ舞台にプロ志望者が入って競うことは
ルール違反だと私は考えます。

アマチュアとプロは、そもそも目指す音楽の方向性が違い
練習量もその比ではありません。
私は学生時代、ある授業で先生が

「音大を卒業した人は、のど自慢には出られなくなる
なぜなら、音楽のプロだから」

とおっしゃっていたことを覚えています。
ところが近年、のど自慢を見ていると、現役音大生しかも歌科
の人や、プロの歌手になるための専門レッスンを受けている子供
をちらほら見かけます。現役音大生については、
卒業していないからエントリー可能な範囲内であるとか
そう言う問題ではありません

音楽を専門的に勉強してプロになるための準備をしている人なのだから
アマチュアで趣味で音楽をやっている人より、上手くて当たり前なのに
素人の中に混じって褒められたい、優勝したいと思うこと自体が、
プロの精神に反しているのです。

プロ志望者同士が競い、デビューを目指すコンテストは世の中に
たくさんあります。テレビでオンエアされるコンテストも
ありますから、他の仕事をしながらそれでも音楽が好きで
音楽を続けて来た人達のための舞台を、自身のキャリア作りのために
利用するべきではありません。
先程出ていた英才教育を受けた子供達も、視線の先は
のど自慢チャンピオン大会の優勝ではなく、
それをキッカケにしたプロデビューです。

また、のど自慢はカラオケ大会な訳ですから
オリジナル曲では勝負出来ないため、他人が歌った曲を
歌い込むことになり、実はこれも本当にポピュラーで
プロを目指す上ではリスクの高い選択であることを覚えておいてください。

クラシックとポピュラーでコンテストの位置付が違う理由は
クラシックでのコンテスト(コンクール)に
ポピュラーが該当するものは動員数だから、です。

プロのアーティスト、音楽家とは
単に演奏や歌が上手ければなれるものではなく
立ち振舞、その他色んな要素が揃った人のみがなれるものです。

本当にプロデビューしたいと思う人は、
どんなジャンルであっても「実績」を積み重ねてください。
その実績は、きっとあなたの願いを叶える助けとなりますよ。

それでは、またColumnに相応しい情報がありましたら
随時アップしていきます。
皆様も、花粉症に気をつけてお過ごしください!