皆様こんばんは!
Producing office SOLEIL杉山薫です。
「正しい譜面の選び方」について
続きを書いていきます。
前回の記事はこちら
正しい譜面の選び方とは ①
ポピュラー音楽の譜面は、完成音源を誰かが採譜したもの
現代では、クラシック音楽だけでなく、たくさんのポピュラー音楽の譜面も
出版されています。ピアノソロ、弾き語り、バンドスコア、ブラスアレンジ等々
ヒット曲であればあるほどたくさんのアレンジがあります。
しかし、こうしたヒットソングの譜面は、
大抵ピアノやブラス等のアレンジ、編曲をした人が書いたものです。
つまり、
クラシック音楽は譜面に書かれた音を皆が演奏しているのに対し、
ポピュラー音楽は、完成音源がまずあり、その音源から譜面起こしをしたもの
これが、クラシックとポピュラー音楽の譜面での決定的な違いなのです。
私もここ最近、自身で作曲や現代のヒットソングのアナライズをするようになり
譜面は目に見えない音楽を可視化する、非常に優れたツールであると言うことを
何度も感じています。ですが、どんなに譜面が音楽を可視化する優れたツールであっても
実際の演奏を100%紙面上に書き表すことは、
譜面が動画ではなく静止画である以上、出来ないのです。
図2
図2は、ある曲のボーカルパートを譜面にした例で、
Aは、ボーカリストのニュアンスの8割を書き表したもの
Bは、ボーカリストのニュアンスを100%正確に書き表したもの
だとします。
どちらの方が分かりやすいでしょうか?
大抵の人がAの方が分かりやすいと答えるだけでなく、もうひとつ
図の中にも記載しましたが、
ポピュラー音楽の譜面を必要として購入する、出版社から見た客層は
音楽の専門家ではない、一般リスナーの人たちのため
どんなに正確に音やリズムを書き表したとしても
その譜面を買った消費者が理解出来なかったり、拒絶感を感じてしまうような
書き方をした譜面では、商品として成立しないと言うことなのです。
勿論中には単純なチェックミスで間違った書き方をしている譜面もありますが
現在出版社が販売している譜面の大半は一般リスナーが
好きな音楽を演奏するための手引書の役割である以上、やみくもにCD音源の通りに
記譜することよりも、読み手に楽曲の大まかなニュアンスを掴んでもらうために
必要な情報を、できる限りシンプルに書いているのが、ポップスの譜面です。
私の講座を受講される方からもたまに質問をいただくのですが、
譜面の通りに弾いているはずなのに、CDのニュアンスにならない、と言うのは
自身の譜読み間違いもありますが、こうした理由のためです。
そもそもその譜面が楽曲を100%表現出来ていない、と言うことなのです。
複数の譜面を見比べることの大切さ
よく、新聞は複数読み比べると良い、と言いますが、あれは新聞にはどうしても
その新聞社の思想や価値観が入っているため、1社だけしか読んでいないと
真実を見落としてしまうためです。譜面も同様に、
特にポピュラー音楽の譜面を使うに当たっては、
そもそも自身のやりたいことと合っていない譜面を選んでしまったために、
どんなに譜読みと練習を重ねても理想の演奏に近づけない、と言うこともあります。
ですので、何か少しでも譜面に疑問を感じた場合は、
他のアレンジ、編曲者が書いた譜面を見てみてください。
楽器店で紙面上で閲覧出来ればベストですが、
必ずしも目的の譜面が店頭に置いてあるとは限りませんし、
今は譜面もダウンロード購入出来ますので、そうしたダウンロード購入サイトで
閲覧出来るサンプル譜面でも十分ヒントは得られます。
中には同じ曲の譜面とは思えないほど、採譜者によって異なる場合もありますし、
ピアノソロアレンジも、
必ずしも上級アレンジが原曲に1番忠実なアレンジをしているとも限りません。
是非、ご自身の目的に合った譜面を選んでいただき、
そして、最終的には譜面に書かれたヒントの意図を考えて、
あなた自身の解釈による演奏をしていただけたらと思います。
次の記事では、補足としてクラシック音楽と、ポピュラー音楽の譜面の例外について
解説をします。