コロナ後、今後10年の音楽業界動向について①

皆様こんにちは。Producing office SOLEIL杉山薫です。
前回のColumnを書いたのが8月でしたが、
9月はお客様対応で大事なお仕事が重なったため
Columnが書けませんでした。
(Twitterでは最近ウォーキングでカモちゃんを始め
野鳥観察に夢中になっておりますが・・・^^; )
そうこうしているうちに、急に涼しいを通り越して
肌寒く感じるようになってしまいました。
私は頭痛持ちで、ここ最近も頻繁に頭痛に悩まされていますが
これだけ気温が一気に下がると、健康な人でも体調を崩しかねません。
今年はコロナのこともありますので、
皆様本当に体調には気をつけてお過ごしください。

ところで、今回のColumnですが
私なりに考える、コロナ後と、今後10年間の音楽業界で
予想される変化について、書いてみたいと思いました。
実際に10年後、どうなっているのか
どれだけここで書いたことが現実になっているかは未知数ですが
ご参考にいただければと思います。

 

音楽業界がコロナで大打撃を受けてしまった理由とは

今後10年の予測を書く前に、まずは過去の振り返りをしたいと思います。
今回のコロナでは、音楽業界に限らず、全ての職種が
何かしらの影響を受けました。
中にはドラッグストアやスーパーなど、来客数が増えた業種もありますが
春先のマスク騒動を見ても然り、一概に売上が増えたからと言って
喜べる状態ではありません。私も色んな人と話して感じますが
コロナで仕事が増えた人、解雇はされてないけど仕事が減った人、
解雇されてしまった人、どの立場の人も、それぞれ悩みがあり大変です。

そんな中でも音楽業界は軒並みコンサートやイベントが中止になり
今年5月末の読売新聞の記事では、損失は6900億円に推計されると書かれています。

コロナで音楽やスポーツイベント中止、損失推計6900億円
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20200531-OYT1T50099/

 

テレビや各メディアでもエンタメ、音楽業界がコロナで
大変なことになっていると言う報道を見た方も多いのではないでしょうか。
実際に私の周囲でも、本当にこの半年間
大変な思いをされている方々のお話を伺いました。
私自身も胸が痛くなる思いでしたが
個々を案ずる気持ちと、音楽業界全体に対しての意見は別のことなので
今は、業界全体についてのことを述べていきます。

 

私は、コロナで音楽業界が大打撃を受けてしまった1番の理由は
特定のブランドを使えば「何でも」売れた、
1990年代の音楽バブルが終息した後
商品として販売する音楽の質を高めることではなく、
コンサートや副産物的なイベントでの収益に「頼りすぎた」
ことが原因だと考えています。

元々、商業音楽は芸術音楽と違い作品を聴くことのみで
価値を決めるのではなく、アーティストの容姿、性格、
ライブも照明や特効を使った様々な演出などから、総合的に判断するものです。
そのため、コンサートは勿論のこと、握手会を始めとする販促イベントを
行うこと自体を私も否定している訳ではありません。
ですが、これは全てのジャンルのアーティストマネジメントに言えることで、
どんなジャンルであっても歌手、音楽家(ミュージシャン)を名乗る以上は
音楽に対して秀でた物があることが大前提であるにも関わらず
2000年以降からは特に、音楽を売っているハズなのに
容姿が良ければ歌がどうでもよしとされてしまう傾向が強くなってしまったと、
ヒットチャートを見て感じます。

その結果何が起きたかと言いますと、
音楽を聴くこと以外を目的として、コンサート会場へ足を運ぶお客さんが
増えてしまいました。

実際に私がこの10年間、色んな現場に裏方ではなくあくまで客として
足を運んだ限りでも

・お目当てのメンバー、アイドルを見られればそれでいい
・同じファン仲間と会えることが楽しくてライブへ行く
・ヘドバンしてストレス発散出来ればそれでいい

と言う人達を、何人も見かけてきました。

先程も述べた通り、商業音楽はエンタメなので
上記のような気持ちがあること自体は問題ありません。
ですが、音楽を聴くこととの優先順位が、逆転や
9:1にまでになるほど、音楽以外を楽しむウェイトが大きくなってしまうと
結果として音楽はただのBGMになり、上手かろうが下手かろうが
お客さんにとってはどっちでも関係ない、イベントのおまけになってしまうのです。

もう少し分かりやすい書き方をするなら、
音楽を売っている業界なのに、
音楽が好きな人ではなく大して音楽が好きではない人達をターゲットにした商売
をする傾向が、音楽バブルの終息後、更に強くなったと言えます。

結果、音楽が好きな人達はどのように反応したでしょうか。

 

J-POPを聴かなくなった音楽好きユーザー達

2004年の冬のソナタによる韓流ブーム以降、日本のマーケットにも定着したK-POP。
個人的には、今日本のマーケットで売られているK-POPは
韓国人アーティストが歌っているとは言え、ハングル語ではなく
日本語で歌っている楽曲が大半なので、韓国人が歌っているから
と言う理由なだけでK-POPと呼ぶべきなのかも、疑問に感じています。
正直、聴いているだけなら日本人アーティストが歌っている曲と何ら遜色ありません。
マーケットの国の言葉で歌うことこそが
韓国の芸能マネジメントの戦略なので、それはすごいことですが
ご存知の方も多いでしょう、日本に来る韓国の芸能人は
日常会話も出来るくらいに歌だけでなく語学もしっかり教育されています。

日本の芸能界も、勿論甘い訳ではななく厳しい競争がありますが、
それでも、K-POPと呼ばれるジャンルの曲を聴くと
外国でセールスを出すだけの品質があるものが多く、
K-POPがこれだけ日本で売上を出せた理由は
容姿以外の面でも品質にこだわって戦略をしてきたからだと感じます。
最近はK-POPもアーティストが半ば飽和状態になり、
韓国人アーティストだから売れる、と言う風潮ではなくなりましたが
とりわけ初期のK-POPでヒットチャートに並んだようなアーティスト、
作品は品質も良かったことも大きいと言えます。

そうすると、日本にいたJ-POPが好きだった音楽ユーザー達のこだわりは
「良い音楽が聴きたい」でしたので、
彼らは、日本人が歌っているけど、音楽は二の次にされている作品よりも
日本人でない人が歌っているけど、品質の高い日本語の歌を選ぶようになりました。

私が見てきた限りでは、80年代、90年代J-POPが好きだったユーザーは
K-POPや洋楽など、J-POP以外のジャンルのユーザーに流れたか
当時好きだった音楽を今でも聴いているかのどちらかです。
勿論中には2000年以降も日本人アーティストを
追いかけてくれている人もいますが、比率は多くありません。

10代、20代の人達は日本人アーティストで、流行りの物を
聴いてくれている人もいますが、中には物心ついた時からK-POPが身近にあり
生まれて初めて聴いた曲がK-POPだったので、そのままの流れで
J-POPをまともに聴いたことが無いと言う人もおり
日本人なのに、日本人が作っている音楽に触れたいと言う興味すらおきない
と言う現実に、私は衝撃を受けました。

また、30歳以下の人達でも音楽が好きな人は一定数いるものの
今は若者にとってのエンタメは音楽に限らずゲームアプリ、You Tube、
プロスポーツ等、様々なものがあるため、やはり10年前20年前のように
流行りのアーティストの名前を言えば、誰にでも通じる時代ではなくなりました。
世の中全体が、以前よりも音楽に対して興味を持たなくなった、
地上波の音楽番組が減ったことや
残っている音楽番組もゴールデンタイムではなく深夜枠になってしまったことが
それを証明しています。

私が子供のころは、ゴールデンタイムはほぼ必ずと言ってよいほど
プロ野球の巨人戦が19:00~21:30ごろまでどこかしらの地上波で放送されていました。
アラフォー以上の世代では
プロ野球の放送延長のおかげで見たい番組が見れなくなった、
録画に失敗した経験をした人も多いと思います。
ですが、今はスポーツ専用のチャンネルが出来たことと、
昔ほど地上波ゴールデンタイムで放送して視聴率が取れなくなったので
ほとんど見る機会は減りました。
それでも、プロ野球観戦が好きな人は球場に足を運んだり
専用チャンネルで試合を見ているので、音楽も同様に
本当に好きな人が、自分で足を運んで聴く、見るものに変化していきました。

そんな中、音楽バブルが終わり、韓流や、音楽以外の多数のエンタメとの競合を
せざるを得なくなったJ-POPが売上を作っていくために取った手段が

「どんな手段を使ってでも、誰をターゲットにしてでもよいから利益を作る」

と言うことだったのかもしれません。
その結果、作品自体よりも販促のイベント、グッズでの利益に
依存するような事態になっていったと言えます。

確かにコロナが音楽業界に大打撃を受けるトリガーにはなりましたが、
その要因は、何もコロナが騒がれる何年も前からすでに発生しており
むしろ、これまでなんとか持っていたことの方が奇跡だったのかもしれません。

しかし、業界全体の傾向としては、利益を作るためなら手段を選ばず
と言う状況になっていく中でも、良い作品を作ってきたアーティスト、スタッフも
一定数存在しました。彼らは、そうした時代の流れに対して
どのような選択をしていったかについて、次のColumnでは触れたいと思います。

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