コンサート業界について③

皆様こんばんは。Producing office SOLEIL杉山薫です。
前回の投稿から1ヶ月近く経ってしまい申し訳ございません。
西日本では大雨で大変な被害が起きておりますが、
これ以上被害が大きくならないことをお祈り申し上げます。

今日はコンサート業界についてお話3回目です、進めて行きましょう。

過去の記事はこちら
コンサート業界について①
コンサート業界について②

コンサート制作担当の仕事が聴衆に分かりにくい本当の理由

前回、コンサート制作の仕事について書きましたが、今はSNSを自己責任で使える時代ですし、
良し悪しはともかくとして、中には裏方と言えどもファンの間では有名なスタッフもいます。
ですが、どんなにコアファンの間では有名な制作担当だとしても、一般的に
制作担当の業務内容がお客さんに分かりづらい本当の理由を、
今このコラムを読んでくださっている皆さんには特別にお伝えします。

コンサート制作担当の仕事が何なのかよくわからないと聴衆が感じる本当の理由は

コンサート制作担当が本番中に絶対にやらなければいけない仕事は、
特に無いからなんです(笑)

いや、いくらなんでもそりゃないでしょと思われる方もいらっしゃるでしょうから、
もう少し補足します。

コンサート制作の業務はあくまでコンサートが開催されるまでの準備と、
公演終了後の精算作業です。
敢えて制作が本番日にやらなければいけない仕事を挙げるとしたら、それは
本番日、朝機材の搬入から始まり本番の公演が無事に終了し、
終演後の撤収作業が全て終るのを見届けることです。

逆を言えば、コンサート制作担当が本番中もやらなければいけないことがあるのなら、
それは、準備が前日までに終わらなかったり、当日何かしらのトラブルが発生したためで、
制作が当日何もやる仕事が無くて暇をするくらいが理想的と言われているほどです。

そんな、本番当日にマストでやる仕事は公演の成功を無事見届けることのみ、
と言う制作担当ですが、当然ながら楽な仕事ではありません。
1人前の担当者が抱えるアーティストは4~5組になることもあり、
それぞれのアーティストが異なる日程でツアーを行い、
更に本番日を迎えるころには大抵次のツアーの準備が始まっているため、
担当はいくつかの業務を並行して行います。
また、コンサート制作がどうしても多忙な日々になってしまう理由のひとつに、
事務所でオフィスワークが出来る日が少ないことがあります。
本番日は会場に居なければいけなく、ツアーが始まれば長期出張、更に本番日でなくても
リハーサルのため終日スタジオに入ったり、ほとんど会社に居られません。
そんな多忙な制作担当が事務所に居る日にはここぞとばかりに打合せの嵐であったりと、
仕事が出来る制作ほど忙しいのです。

お客さんが制作担当の仕事が何なのか分かりづらいと言うのは、
聴衆はあくまで制作担当が入念に準備を重ねて完成された、本番(日)のみを見ているから
なんです。
それでは、本番を迎えるまでに制作担当がどのような準備を進めていくのか、
大まかな流れをご説明します。

図4

正直、私自身もコンサート制作がどう言うことをしているのかを理解するのに
数年はかかりました。私が理解するための時間を要してしまった理由はいくつかあります。
結果としては営業(現場)もデスク(内勤)も両方経験出来てよかったと思っていますが、
私は秘書と言うお仕事をいただいていた中での業務だったため、
4年間の会社員生活の中でひたすら現場だけに時間を注いだと言うよりは、
音楽業界での仕事の色んな部分を満遍なく経験させていただきました。

また、こちらの方が理由としては大きいですが
結局業務発注のツリー(発注側、受注側)の流れはあっても
例えばコンサートの全ての発注元であるコンサート制作会社に所属をしていても、
新卒1年めの新人よりも、舞台監督さんや

イベンターの仕事を10年経験している人の方が、よっぽど
音楽業界のことも、コンサート制作担当の仕事についても理解されています。

そのため、現場では業務発注のツリーよりも、
職歴やキャリアのある人が目立つことの方が多く、
実際現場ではひとつのチームになりコンサートを作り上げるため
手が足りなければ何でもやりますので、
各社の立ち位置やコンサートの流れについて理解するのに
時間がかかりましたが、それは理解するスピードも人それぞれだと思います。

図4はコンサート制作会社の業務と、工務店の業務の主な流れを書いたものですが
私は社会人になって10年経った今でも、母が言った、工務店の仕事と似ている
と言う喩えが1番しっくりくると思っています。まさに、
コンサートで言う会場手配は、家を立てる時の土地探し、舞台スタッフの発注は大工さんの発注
と言ったところです。

ドームクラスの公演であっても、200キャパのライブハウスでも、
基本的に業務内容は変わりません。
ケータリングなら、発注するお弁当の数が100になるのか10になるのかと言う違いはあっても、
終日拘束されるスタッフの食事を手配する、と言う点では同じです。

単発公演とツアーも、単にツアーの場合は次の公演までの移動を挟むため、
移動時間を見越した上で公演日程、スケジュールを組まなければいけないと言うだけで、
全国10箇所を回るツアーも、1つの公演を行うための工程を10回繰り返せば、
ツアーになるのです。

海外公演の場合は少し特殊な作業が入りますが、大まかな流れは同じです。

それでは、まとめとして次の回では
理想的なコンサートとは何かについて、書きたいと思います。

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