皆様こんばんは、Producing office SOLEIL杉山薫です。
世の中はコロナウイルスの話題で持ち切り、
都内でも感染者が出たと言うことで、
とても他人事とは思えず不安がよぎりますが、
冷静さも失わずに、各自が出来る予防を
やっていかなければと思います。
さて、楽曲がヒットする理由についてのコラム
3回目はいよいよヒットする要素について触れていきます。
音楽以外の商品ヒットにも通じる理論ですので
ぜひ参考になさってください。
前回までのColumnはこちら
楽曲がヒットする理由について①
楽曲がヒットする理由について②
ヒットの条件、それは「ヒットメーター」をバーストさせること
ひとことで言うとこうなりますが、では、そもそもヒットメーターとは何かについて
解説をしていきます。
※ヒットメーターとは、あくまで私の造語です(笑)
以前書きましたこちらの記事を参考としてご紹介します。
音楽系の学校へ行くメリットとは④
このColumnでは、最近一般企業に就活をしようとしている音大生が、
一般企業での就活で不利な理由について述べました。
音大生が学生時代に身に着けたスキルは演奏や、音楽に関する知識であり
一般企業が求めている簿記や論文作成、プレゼン能力ではないため
本気で一般大学の学生と就活で戦うには、音楽のスキルとは別途
簿記を始めとする希望先の企業が求めるスキルを身に着けなければいけないと
記載しています。
このこととの関連性を示していくために、
例として、同じ日に楽曲をリリースしようとしている4組のアーティストが
いたとします。下の絵をご覧ください。
補足をします
①ジャンル
これはマーケットの規模を指します。
この数値が小さいほど、世の中全体に知れ渡るヒットを作ることが
物理的に難しくなります。理由はもちろん、そもそも
そのジャンルを聴く人の人数が少ないためです。
例えば、AのアーティストのInstrumentalは
楽器のみで歌が無いジャンルです。最近はインストバンドも増えてきましたが
それでも、インスト界の中では御の字のセールスを記録しても
それが世間全体への知名度とは一致しないことはよくあります。
オリコンのランキングも、全体とジャンル別に分かれているのは
よっぽど天変地異レベルの何かでもない限り、演歌やクラシックの
アーティストが総合1位を取ることは難しいためです。
以前私がマネジメントをしたバンドは、例に挙げた4組の中では
Dのアーティストに近い、ジャンルの加点が10程度の音楽をしていて、
夢は東京ドームでライブをやることだと言っていました。
そのため、私は彼らに、
もし、今やっている音楽のジャンルのまま活動を続けるのなら
10年頑張ってZepp規模(3,000)の動員が限界なので
本気でドーム(5万人の動員)を目指すなら
そもそも、勝負するフィールドをもっとマーケットの広い
ポピュラー音楽にシフトしなければいけないと伝えました。
音楽をシフトすると言うことは、音楽だけでなく
容姿も一般層の受けがよいルックスにする必要があります。
・今より全員が5kg痩せる
・清潔感のあるヘアスタイル、服装にする
などの、音楽以外の面でも様々な制約が課せられます。
私がマネジメントしたバンドは、そうした制約より
5万人の動員が難しくても自分たちのやりたい音楽をしたい
と言うことで、私の手からは離れることになりましたが
中には、5万人の動員を目指したいから本当はメタルがやりたいけど
大衆受けのよいポップスを仕事としてやる人たちもいます。
むしろ比率で言うならそう言う人の方が多いです。
音楽で生計を立てられる人が1,000人に1人いるかどうかと言う
1番の理由が、音楽とは元々が人間の感情的なものや自己表現のため
本来はビジネスと結びつけること自体に無理があるためです。
ですが、人類の長い歴史の中で、音楽を自分で作れない人が
作れる人の才能をお金で買いたいと考えるようになり、
そうした音楽を買いたい側と、自身の作品を世に広めたいと言う
造り手側の意向が合致し、
音楽を商品とするビジネスが成立するようになりました。
上述の通り、プロのアーティストは
世間が求めている音楽を提供するのが仕事であり
それは自分がやりたい音楽と完全一致しないことが大半で
そのバランスを保つことは、長年第一線で活躍しているアーティストでも
難しいことのため、売れなくてもいいから自分のやりたいことをやりたい
と考えるアーティストが多数となってしまうことも、分からなくもありません。
②所属事務所
これはマネジメント、プロモーション能力を指します。
個人事務所でも、社長が大手から独立した人であったり
大手と連携している事務所もあるので
大手だから必ずしも有利、中小所属のタレントは売れない
と言う訳ではありませんが、数値化するとしたらやはり
大手事務所の方が、資金面含めて会社としての体力がありますので
ポイントは高くなります。
③創作力
これは、最近私もやっと少し分かるようになってきましたが
どんなに素晴らしいアレンジを施しても、元のメロディー、コードが
よくないことには完成度を高めるには限界があると言うことです。
バンドマン(演奏者兼作曲家)が作った作品が
100%作曲1本で生計を立てている人に敵わないとは言いませんが
これも数値化するとしたら、プロの作家が書いた曲の方が
クオリティーが高い確率は高いと言うことです。
なお、AのギタリストとCのバンドとの創作点に開きがあるのは
編曲を専門とするアレンジャーの力が加点されていることになります。
(実際は、インストであってもメジャー、ましてや大手所属なら
アレンジャー無しの全てアーティストのみで曲を仕上げることは
現実的ではありませんが、今回は分かりやすくするためにこの配点にしました)
④ルックス
これはもう言うまでもないです。
個人的には整形反対派ですが、それでも容姿がネックとなって
本来着目してもらいたい音楽に見向きもしてもらえないのなら
アーティスト自身の人生ですから、整形する選択をする人がいることも
否定は出来ません。
ただ、ここで指摘したいのは
ジャンルによっては大してルックスは評価対象とならない
と言うことです。
Aのアーティストは、ルックスについての加点が25点ですが
インストを好んで聴くリスナーはアーティストの容姿ではなく
音楽の内容で判断をする、耳の肥えた人が大半です。
勿論容姿も良いにこしたことないですが
Aのアーティストは音楽面での強化を図らなければ
ブレイクしたとしても音楽が売りのアーティストでは
なくなってしまいます。
⑤演奏/歌唱
ここまでDのヘビメタバンドについて、殆ど記述がありませんでしたが
ようやく彼らの出番がやってきました。
そもそも、今回のサンプルにこのDのバンドを入れた理由は
フリー素材のかわいいイラストを探していたら、
メタルバンドのイラストがあったためです(笑)
元々ビジュアル系や、ラウド系の絵を考えていましたが
マーケット規模が大きくない、ヒットを作るのは難しいジャンル
と言う点ではメタルも同じなので、このイラストを使うことにしました。
メタルと言えば、アミューズさんのBABYMETALの活躍はすごいですが、
なぜ、BABYMETALが「メタル」と言う
この表で言うところのジャンル加点は5しかない音楽であるにも関わらず
ランキング上位に入ったり、ドーム2DAYS、計11万人の動員が出来たかについては、
ぜひ皆様ご自身で考えてみていただきたいです。
(このColumn本文の中にもヒントはあります)
話を戻しまして、この、演奏と言う評価項目の中では
Dのメタルバンドがダントツ1位です。
ですが、Dのバンドは演奏力が40の加点があっても
ジャンル、そして事務所のプロモーション能力の加点が5しかないため
トータルで見ると、演奏、歌唱は加点5しかないBのアイドルの約半分の
合計点となってしまいます。
勿論、J-POPを選んだからと言って売れる訳でもないですし
これはあくまでヒットの条件を分かりやすく可視化するための
サンプルでしかありませんが
演奏が上手いだけでは、売れる訳ではない
と言うことが、少しでも皆様に伝わればと思います。
ヒットの要素についてはもう少し掘り下げが出来るので
また次の記事で詳しく解説をしていきます。
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楽曲がヒットする理由について④